RESEARCH

オートファジーとは

真核細胞の生命活動は合成と分解の絶妙なバランスの上に成り立っている。遺伝情報を担う本体としてのDNAの発見以来、転写・翻訳を介したタンパク質合成システムの研究が広く行われてきた。しかし、合成するだけではタンパク質が細胞内にあふれ、細胞自身に悪影響を及ぼすことは容易に想像される。そうした中、近年タンパク質分解システムの研究が注目を集めるようになってきた。短寿命のタンパク質を選択的に分解するユビキチン-プロテアソームシステムと並び、長寿命のタンパク質分解に大きく寄与しているのがオートファジー(自食作用)と呼ばれるシステムである。オートファジーとは、液胞/リソソームを介して細胞質成分を大規模に分解する真核生物に広く保存されているシステムである。

オートファゴソーム形成の分子機構

栄養飢餓等によりオートファゴソーム形成が誘導されると、隔離膜と呼ばれるカップ型の膜構造が細胞質中に出現する。隔離膜は被分解物を取り囲むように湾曲しつつ伸展し、やがて被分解物を内包した二重膜オルガネラであるオートファゴソームとなる(図1)。当研究室では真核細胞のモデルシステムとして出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeを用いてオートファジーの研究を進めている。オートファジーという現象が興味深いのは、オートファゴソーム形成の過程が極めて特徴的かつダイナミックな膜現象を伴って進行する点にある。この問題に関して蛍光顕微鏡を用いたライブイメージングの手法を用いて研究を進めている。

図1

オートファゴソーム形成には、18種類のAtg(autophagy-related)タンパク質が関わっている。それらはもよっつの機能群を構成して機能している(図2)。私たちの研究室では、出芽酵母の隔離膜を可視化する手法を開発し、各Atgタンパク質が隔離膜形成中に細胞内局在を変化させる様子をライブイメージングにより捉え、得られた画像データを定量解析することで、隔離膜を経てオートファゴソームが形成されていく分子機構の全容を解明すべく研究を進めている。

図2

オートファジックボディ分解の分子機構

細胞質で形成されたオートファゴソームは細胞内分解コンパートメントである液胞と融合し、液胞内部に内膜からなるオートファジックボディを放出する。オートファジックボディは液胞内加水分解酵素により内容物ごと分解される。出芽酵母ではオートファジーの進行を光学顕微鏡を用いて確認できる。白く抜けた液胞の中に多数見える粒子がオートファジックボディである(図3)。オートファジックボディの分解には、Pep4およびPrb1と呼ばれるプロテアーゼと共に、Atg15と呼ばれるリパーゼが必要である。私たちはAtg15がオートファジックボディを分解する過程を再構成し、ライブイメージングにより可視化することを目指して研究を進めている。

図3

新規非膜オルガネラの探索

核小体は古くから知られる非膜オルガネラである。近年、細胞核の中だけではなく、細胞質にも非膜オルガネラの存在が知られるようになってきたが、

網羅的な探索は未だ行われていない。我々は、独自の観点でゲノムワイドに新規非膜オルガネラの探索を行った。得られた候補について細胞生物学的な視点で詳細な解析を行っている。